老化は避けれらない。けれども遅くすることはできる?
老化とは不可逆的な生命体の衰退を意味しますが、実は胚など、生まれたときから衰退が始まっています。一般的には、成熟後に起こる生理機能の衰退を意味し、遺伝的な要因とストレスや環境などの外的な要因によって起こる変化と考えられます。さらに最近の研究では、2つの説が有力と言われています。
一つは、プログラム説。予め、DNAに老化が進行するようにプログラムされていて、一定回数分裂するとそれ以上分裂せずに停止するというもの。これまで有力だったのはテロメア説で、染色体の維持分配に必須なこのたんぱく質複合体が、細胞分裂を繰り返すたびに短くなり、最後はこれがなくなって細胞分裂が終わるというものです。それ以外にも、がん抑制遺伝子など、老化に関連する遺伝子が数多く発見されており、これらが複合的に老化をもたらすとされています。
もう一つは、エラー蓄積説。細胞分裂を繰り返すうちに引き起こされる遺伝情報の写し間違えや、放射線・紫外線・化学物質などの外部要因によるDNA配列の損傷、また痴呆症を引き起こすと言われているアミロイドの老廃物の蓄積など、間違った遺伝情報の積み重ねが老化を生むというものです。
どちらかと言えば、プログラム説の方が優位なため、老化を止める方法はないと考えるのが普通になっていますが、エラー蓄積説では、エラーが発生する様々な要因を排除することができれば寿命は延びると考えられています。中でもハーバード大学のシンクレア教授とそのグループは精力的に研究を進め、今後人生が150年になることを目指しています。
信長は「人生50年」と謳いましたが、今や人生90年にも近づこうとしています。昔に比べて医療が格段に発達して、人命が尊重されるようになった現代。ただ、残念なことに、海外に比べて日本の老人は長期にわたって体が思うようにならず、介護の対象となっている人が多いように思われます。プロポリスを輸入しているブラジルの取引先の方と話しても、ブラジルではピンピンコロリが普通と聞きます。また、知り合いが多くいた中国でも似たような話を聞きます。日本はどうしてなのでしょうか?
今後、老化の進行が遅くなる研究が進んで人生100年を超えることになったときには、同時に元気な100年であってほしいものです。ただ寿命が長いだけで寝たきりで、認知症でいたとしたら、それは新たな不幸です。少なくとも私にとっては。
参考文献:
・コトバンク 家庭医学館「老化」の解説 https://kotobank.jp/word/%E8%80%81%E5%8C%96-152371 (2021年7月2日閲覧)
・Harvard Medical School | The Sinclair Lab - Research https://sinclair.hms.harvard.edu/research (2021年7月2日閲覧)