優秀なアフリカナイズドミツバチ
蜂って何種類ぐらいいるかご存じですか?
プロポリスを作るのは蜂です。蜂は世界にはどのくらいいるのでしょうか?ミツバチ、スズメバチ、アシナガバチ・・・、日本だとあまり何種類も思い浮かびませんが、世界にはなんと10万種もの蜂がいるのだそうです。それだけ多いと蜂にも色々なタイプがいて毒針なんて持っていないのもいます。
大きく分けると、体にくびれがあるハチ亜目と、体にくびれがないハバチ亜目に分かれ、さらにハチ亜目も毒針のある有剣類と毒針のない有錐類に分かれます。つまり、日頃私たちがハチと言っているのは有剣類で、このタイプは群れを作るなどの社会性を持つ種類が多くいます。
アフリカナイズドミツバチの誕生
日本ではスズメバチ、アシナガバチ、ミツバチ、マルハナバチなどが外敵と戦うために毒針を持って攻撃することがよく知られていますが、海外にも狂暴なハチはいっぱいいます。そのひとつが今のブラジルの養蜂を支えているハチの先祖「アフリカナイズドミツバチ」です。
このアフリカナイズドミツバチは、より優秀な蜂を作るためにアフリカから連れて来られたアフリカミツバチと西洋ミツバチを掛け合わせた交雑種でした。ところがこの人工的に作られた交雑種が実験中に逃げ出し、国際的な大問題を引き起こしたのです。
「キラービー」と恐れられる蜂になる
1950年代にブラジルに連れてこられたアフリカミツバチは、西洋ミツバチとの交配に成功しました。ところが、実験中にその新種が逃げ出してしまったのです。この新種は、従来のアフリカミツバチをはるかに上回る狂暴性で、大人しい在来種のミツバチの女王バチを殺して巣を乗っ取り、働きバチを奴隷化し、人や家畜に対しては猛烈な毒針を浴びせたのです。
次々と在来種を駆逐したアフリカナイズドミツバチは南アメリカで一気にそのコロニーを増やし、ブラジルでは当時4,000人が命を失い、牛や豚の家畜に至っては1万頭が死んだと言われています。南アメリカはおろか、中央アメリカ、メキシコ、アメリカ南西部にまでその領域を広げたアフリカナイズドミツバチは「キラービー」とも呼ばれ、メキシコはアメリカと「アメリカミツバチ規制協力協定」を結んでメキシコ南部に防衛線を設けるまでになりました。
ブラジル養蜂の救世主に
ところが狂暴極まりない「キラービー」にも転機が訪れます。何度も西洋ミツバチとの交配を繰り返すたびにその狂暴性が次第に薄れ、養蜂に適した種に変わっていったのです。
このアフリカナイズドミツバチは、その身体能力の高さから、飛行速度は普通のミツバチの二倍程度、飛行する高さも三倍程度あり、普通のミツバチよりも圧倒的に広いエリアからより多くのプロポリスを集めてきました。
また、現在のアフリカナイズドミツバチは、西洋ミツバチと変わらない程度の狂暴性で、巣を攻撃されなければまず刺されることはなくなりました。
こうして、「キラービー」と南米で恐れられたアフリカナイズドミツバチも、何十年もかかってようやくパワフルなアフリカハチと勤勉な西洋ミツバチのよいところを併せ持ったバランスのよい蜂となったのです。
数奇な誕生の歴史を持つこのミツバチこそが、今やブラジルの養蜂を支え、ブラジルのプロポリスを語るうえで欠かせない存在となりました。(ブラジルプロポリス本店のトップページにも記載)
参考資料:
・logmiBiz ”品種改良で生まれた、凶暴すぎるミツバチ「キラービー」ブラジルで起きた伝説級の事故の顛末” https://logmi.jp/business/articles/320192 (参照 2022-3-29)
・谷口明(1990)「今世紀最後の生薬 プロポリス」p132-142